講義第13回: MS-Excel, 簡単なデータ処理

今回は最終回ということで、MS-Excel を使った簡単なデータ処理をやってみ る。「計算機」という名前がついているのに今まで全く実際に「計算」するの には使ってこなかったわけだが、まあ最終回で少しだけそういったものに触れ るということになる。

なお、今日は「講義評価」のアンケートを配布するので、説明が終ったあとま ず回答を記入して下さいね。

というわけで、今日の内容は以下の通り。

MS-Excel
データ修正
式のコピー
データ分析
試験と評価について

MS-Excel

今日は MS-Excel を使ってみようということなので、前回と同じように Windows NT の画面に入り、スタートボタンから MS-Excel を起動する。

まず、 Excel の非常に基本的な機能というか動作原理を説明しておく。 Excel は「表計算」ソフトウェアといわれるもののなかで現在ではもっとも広 く使われているものの一つである。

表計算ソフトというのは、その名前の通り基本的な機能は表を作って、そのな かのデータをいろいろ操作したり処理したりするためのプログラムである。使 いみちは非常にさまざまなので、全く一例としてであるが「ある講義の受講者 のレポート、試験の得点から最終得点を計算し、また得点の平均、標準偏差を 計算する」という例(なんか妙に現実的な例ですが、、、)を元にどういう処 理をするかということを考えていくことにしよう。

名前レポート 1レポート 2試験
牧野202050
臼井402080
山口304090

いうまでもないが、名前には特に意味はないし、点数は仮想的なものであ る。

例えば上の例では、レポートは 2 回でそれぞれ 50点満点、試験は 100 点満点であり、最終的には2回のレポートと試験の合計点を 2 で割って総合成 績にするということにしてみよう。

Excel のような「表計算」ソフトが行なってくれることは、まさに上のような、 表のデータに対していろんな計算を行なうという処理を、あまり複雑なプログ ラムを書いたりしなくても簡単にやってくれるということである。

Excel に上のデータをとりあえず入れてみたところの画面を以下に示す。

こういったものを入力するには、単にマウスで入力したい場所をクリックして 選択し、キーボードから文字、数字を入れる。漢字等の入力は Word の場合と 同じで画面右下のメニューで切替える。 ここで、 Excel に入れるデータは、2次元の(つまり、縦と横がある)表になっ ているということに注意して欲しい。例えば「名前」が入っているのはA1 と いう場所(場所のことを「セル」という。これは「部屋」というような意味で 普通に使う言葉である)である。横方向の位置をアルファベットで指定し、縦 方向を数字で指定する。横は、Z を超えたら AA とかいった2文字で指定する ことができる。

さて、このように数字を入れただけではまだしょうがないが、表計算ソフトの もっとも基本的な機能はこのデータを使った計算をする「セル」を与えること である。例えば、セル E2 に

=B2+C2+D2
と書いてみよう。Excel では、最初が = で始まるものが数式ということにな る(らしい)。入力が終ってリターンを押すと、式ではなく「90」という数字 が表示されるはずである。つまり、これは、 Excel が、上の式を指定された セルに入っているデータの数字(20, 20, 50) に置き換えて、その計算結果 (20+20+50=90) を表示しているわけである。

式をいれると結果が出るというだけなら電卓と同じだが、以下、どういうふう に便利なことがあるかをすこしだけ見ていこう。

データ修正

採点が間違っていて、数字を変えたいとする。例えばセル B2 の値を 30 に変 えてみよう。

驚いたことに(別に驚かないかもしれないが)、 E2 の合計のところがなにも しないのに 100 に変わる。

これは、「自動再計算」という機能で、あるセルのデータが書き変わると、そ れに応じてそのセルのデータを使っている数式が書いてあるセルのデータが自 動的に計算し直されるのである。

式のコピー

さて、一人の成績を計算できるのは分かったとして、他の人のはどうすればい いのだろうか?いちいちそれぞれの人の式(セルが違うので式も違ってしまう) を入力するのは面倒である。

Excelでは(というか、これに限らずどんな表計算ソフトでも)、「数式のコ ピー」という機能でこれを実現出来る。マウスでセル E2 をクリックし、選択 された(黒枠がついた)状態にしておく。ここでメニューの「編集」から「コ ピー」を選ぶと、黒枠が変わって破線が点滅する状態になる。次に下のセル E3 にマウスを持っていってクリックし、こちらを選んでからリターンキーを 押してみる。と、 E3 には「140」と表示されるはずである。 つまり、上の数字である 100でも、数式の =B2+C2+D2 でもなく、ちゃんとこ ちらの期待する =B3+C3+D3 が書き込まれ、計算されているわけである。これ はこの手の表計算ソフトの基本的な機能の一つであり、数式をコピーする時に、 自動的に移動に合わせて数式の中身も書き換えてくれる。

さて、本当は単に合計ではなく合計の半分にしたかったので、セル E2 を

=(B2+C2+D2)/2
として、セル E3, E4 にはコピーし直して見よう。これで最終的な点数が計算 できたことになる。

データ分析

3人のデータで分析というほどのこともないが、例えば平均とか偏差値を出し てみよう。今までの方法では、セルE5 に例えば
=(E2+E3+E4)/3 
と書くことになるが、これでは少し面倒なこともある。例えば、人を追加する たびに式を書き換えないといけなくなってしまう。こういった時に便利なのが 関数である。

上に示した様に、セル E5 に

=average(e2:e4)
と入力すると、期待通りに平均が計算される。ここで、一人データを追加して みよう。追加には、まず新しい行を挿入する。これは上のメニューの「挿入」 から「行」を選ぶが、その前に挿入したいところにカーソルを持っていく。例 えばセル A4 を選んでおいて「挿入」「行」の操作を行なうと、4行めがブラ ンクになってもとの4, 5 行めの中身は 5, 6 行めにそれぞれ移動する。この 時、移動の後でもまだ平均は正しい値のままになっていることに注意してほし い。式がどうなっているか見てみると、
=average(a2:a5)
となって1行追加されたことに応じて式の中身が変わっている。セルに数字が 入っていないと、それは平均とかの計算には使われないので、まだ数字は変わ らない。データを入れ、数式をコピーすれば、

と、このように新しいデータも入った平均値が計算される。

ここで e2:e4 などと書いたのは、「範囲指定」といわれるもので、この範囲 のセル全部という意味になる。

偏差値

さて、平均が求まったので、もうちょっと複雑な解析としてデータの標準偏差 を求め、さらに各人の偏差値を計算してみよう。標準偏差は、それを計算する 関数 stdevpを使うだけである。

標準偏差が求まったので、ついでに偏差値も求めてみる(上の図では既に求め てある)偏差値は、

(自分の得点 - 平均)×10/標準偏差 + 50
と定義されている。従って、例えば「牧野」の偏差値は
=(E2-E7)*10/F7+50
でいいわけだが、ここで問題が一つある。この式をF3に書けば正しく偏差値が でるが、これを3行めにコピーlすると
=(E3-E8)*10/F8+50
というふうに E7, F7 も E8, F8 に変わってしまって、期待する結果が得られ ないのである。この場合には、

このように、 E7 の代わりに E$7 といった書き方をする。この、 $ をつけた ものは「絶対位置指定」となる(これに対して、普通の指定は「相対位置指定」) ということになる。絶対位置指定としたものは、コピーした時に見るセルが変 わらないのである。

というわけで、このようにデータを入れながら同時にその解析を少しずつ進めていく といったことが可能で、またプログラムというほどのものを書かなくても解析出 来てしまう(ような気がする)のが表計算ソフトの利点ということになる。解 析結果やデータはもちろんファイルにしてしまったり、また読み出したりする ことができる。

Excel のような表計算ソフトには、まだもっとずっと沢山の機能があるが、例 によってすべての機能は到底紹介出来ないので、あとは各自の興味、必要に応 じて使っていくのがよいであろう。

試験と評価について

前にもいったように、評価は試験、レポート、出席を総合して行なう。試験は ペーパーテストであり、 UNIX, Windows NTの操作のし方、計算機の動作原理 等についての基本的な問題と、なんらかの論述的な問題からなる予定である (過去の試験問題もあるので、参考 にしてほしい)。