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2 非線形 Landau Damping

ちょっとここで話を変えて、非線形 Landau Damping というものを考えてみる。 これはつまり、摂動の作る重力が無視出来ないような時にその摂動がどう振舞 うかということである。

この解析は実は結構難しい。というのは、もともと線形 Landau damping とい うか phase mixing というものはあるので、非線形性が効くかどうかに無関係 に摂動はどんどん減衰していくからである。しかし、とりあえず、非線形な効 果を考えるとどんなことが 起きるかをちょっと整理してみる。

今、とにかくポテンシャルの波というのがあって、速度 $v_w$ で動いている とする。これに対して速度$v_p$ で動いている粒子があるとしよう。この粒子 と波の相互作用というものを考えてみる。

今、 $v_p \sim v_w$ 、つまり大体同じ速さで動いていることにすると、粒子 はその波に対する相対的位置によって受ける力の方向が変わる。波に対して遅 れていれば引っ張られるし、そうでなければ減速される。このため、初期にど ういう位相にいたかによって、大きくエネルギーをもらったり失ったりするも のがあることになる。

ただし、波が無限に長い間維持されていれば、無制限にエネルギーをやりとり 出来るわけではない。これは、座標変換して波が止まっている座標でみれば当 然のことで、あるポテンシャルの谷のなかに止まっているか、それとも超えて 動いていくかのどちらかであって平均すればエネルギーのやりとりは起きない ことになる。



Jun Makino
2003/11/30