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8 球対称の場合

球対称の場合、運動の積分はエネルギーと角運動量の3成分で4つある。一般に はもう一つあるが、これは特別な場合を除いてあまり意味がないので、定常な 分布関数はエネルギーと角運動量だけで書けると思っていい。

いちおう、ここで、意味がないというのはどういうことかということを説明し ておく。そのためには、意味がある特別な場合というのを考えるのがよい。こ れは、ケプラー軌道のような、軌道が閉じる場合である。この時には、エネル ギーと角運動量の他に、軌道全体の向きを表す量(近点経度)が保存する。こ れはちゃんと保存量になっている。

しかし、一般には軌道が閉じない。このときでも、近点経度に対応するような 保存量が実は存在しているが、それにも関わらず、ある軌道がエネルギーと角 運動量で決まる部分空間を覆ってしまう(数学的には、もちろんすべての点を 覆えるのではなく、任意の点について、いくらでも近くにいけるというだけだ が)。こうなっていると、その積分に分布関数が依存すると、連続性とか微分 可能性とかに困難を生じることになる。

さて、 $f$$E$${\bf J}$ によるということにしたわけだが、いま球 対称な場合ということなので ${\bf J}$ の方向にではなく、絶対値だけに依 存するのでないといけない。したがって、実は球対称の分布関数は一般に $f(E,J)$ と書けるということになる。

我々が扱いたいのは自己重力系なので、実際にこれを球対称の場合に書き下し てみると


\begin{displaymath}
{1 \over r^2} {d \over dr} \left(r^2{d \Phi \over dr}\right)...
...2}v^2 + \Phi, \vert{\bf r}\times {\bf v}\vert\right)
d{\bf v},
\end{displaymath} (13)

てな感じになる。



Jun Makino 平成20年6月11日