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1 はじめに

この講義では、天体物理学の扱う主要な対象の一つである自己重力多体系の進 化について、その概要を扱うことにしたい。

「自己重力多体系」というと、難しそうに聞こえるが、基本的には「たくさん の質点が重力で引き合って、まとまった天体を作っている」というものである。 例えば方程式で書けばすべての粒子が他のすべての粒子からの重力を受けて運 動するというだけのことである。

しかし、実際に宇宙にある自己重力多体系を見ると、非常に多様な進化を遂げ ているということはすぐにわかる。この多様性がもっとも顕著なのは銀河であ り、基本的には重力で星が集まっているだけなのに、円盤(渦巻)銀河、棒渦 巻銀河、楕円銀河、あるいは不規則銀河などじつに多様な形をしたものがある。 また、最近の特に HST による High-Z の観測から、このような銀河の形は進 化してきたものである、例えば昔に遡って見ると「晩期型」銀河のほうが「早 期型」銀河より多い(方向が逆だけど、これは定義の問題)ということがわかっ てきた。

これに対し、例えば「球状星団」と呼ばれる銀河内の星団は、比較的単純な 丸い形をしていて、回転もほとんどしていない。また、半径方向の光度分布に ついても共通の特徴がある。

逆に大きいスケールに移って、銀河群、銀河団といったものを考えると、これ らは(銀河の数が少ないこともあるが)良くわからない形をしているものが多 い。結構丸くまとまっているものもあるが、縦に伸びたもの、二つの銀河団が お互いの回りを回っているものなど、多様な銀河団がある。また、比較的大き な銀河団のなかには、 cD と呼ばれる異常に大きな楕円(ほとんど球に近い) 銀河を持つものが多い。

さらに、ここ 30 年ほどの、大規模な銀河分布についての研究から、宇宙には 銀河、あるいは銀河団が一様に分布しているわけでは全くなく、大きなスケー ルで構造があるということがわかっている。

以上のようなさまざまな現象は、「自己重力多体系」という描像で(基本的に は)統一的に理解することができる。その統一的な描像の概要を与えるのがこ の講義の目標ということになる。

具体的には以下のようなトピック を扱う。

これらは、 open clusters, globular clusters, galaxies, clusters of galaxies, large scale structures など、要するに大抵の天文学の対象の力 学的な進化(構造の発達など)を考える上での基本となるものである。なお、 実際の研究の現場においては、多くの場合数値シミュレーションが道具として 使われることになるので、その方法論と問題点についても何回か触れることに したい。

1.1 そもそもどんなもの?(観測)

図 1: 球状星団
\begin{figure}\begin{center}
\leavevmode
\epsfxsize 6 cm
\epsffile{m3.ps}\end{center}\end{figure}

図 2: 銀河
\begin{figure}\begin{center}
\leavevmode
\epsfxsize 6 cm
\epsffile{m51.ps}\end{center}\end{figure}

図 3: 銀河群
\begin{figure}\par\begin{center}
\leavevmode
\epsfysize 10 cm
\epsffile{HCG40.ps}\end{center}\end{figure}

図 4: 銀河団
\begin{figure}\leavevmode
\epsfxsize 10 cm
\epsffile{coma_skyview.ps}\begin{verbatim}http://antwrp.gsfc.nasa.gov/apod/ap950917.html\end{verbatim}\end{figure}

図 5: 大規模構造(天球面)
\begin{figure}\begin{center}
\epsfxsize 12 cm
\epsffile{apm_grey.ps}\begin{verba...
...w-astro.physics.ox.ac.uk/~wjs/apm_grey.gif\end{verbatim}\end{center}\end{figure}

図 6: 大規模構造(距離情報あり) -- SDSS スライス
\begin{figure}\begin{center}
\leavevmode
\epsfysize 10 cm
\epsffile{sdss-zmap-r.eps}\end{center}\end{figure}

1.2 星団--昔の分類

我々の銀河系の中。あまり変でないところにあるもの

1.3 星団--最近の変化

「若い球状星団」あるいは「巨大な散開星団」というべきものが

で多数見つかってきた。


「星団」の分類は再定義が必要と思うが、あんまりまとまった提案はない。

まだ色々でてくるし、、、

1.4 Arches Cluster

銀河中心から 30pcくらい

質量 $>10^4 M_{\odot}$

半径 1pc 以下

写真で明るいところは半径 4'' くらい

発見: Nagata et al (1995)

図 7: Arches Cluster
\begin{figure}\epsfxsize 9.5 cm
\epsffile{arches.ps}\end{figure}

1.5 銀河中心

星団の(ちょっと普通でない)例としての。

最近10年くらいの観測

軌道周期 15年くらいで中心ブラックホール(と思われるもの)の周りを回る 星なんてものが見つかってきた。

1.6 「中心星団」

Genzel et al 2003

K-band

shift-and-add image

中心付近の黒い矢印の先が SgrA$^*$(銀河中心ブラックホール)

図 8: 銀河中心
\begin{figure}\epsfxsize 9.5 cm
\epsffile{f1cut.eps}\end{figure}

1.7 星の表面(投影)密度

Genzel et al 2003

10'' 以内の恒星の質量 $\sim 10^6 M_{\odot}$ (あんまり信用はできない)

若い星が結構多い。

0.5" 以内でも若い星がある。 (S1, S2, S0-16 ...)

図 9: 銀河中心の星の数密度
\begin{figure}\epsfxsize 10 cm
\epsffile{f7.eps}\end{figure}

1.8 いくつかの中心付近の星の軌道

Eisenhauer et al 2005

最近 15年くらいの観測で、中心ブラックホールの周りを回る星の軌道が見えた


星の分布は「等方的」

少なくとも円盤的とはいいがたい


これらの星は結構若い ($10 M_{\odot}$ 以上)

図 10: 銀河中心の星の運動
\begin{figure}\epsfysize 10 cm
\epsffile{0502129fig7cut.eps}\end{figure}


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Jun Makino 平成21年4月20日