next up previous
次へ: 10 球対称な分布関数の例 上へ: 天文学特別講義IV 戻る: 8 球対称の場合

9 $f(E)$の場合

上の場合でもまだちょっと大変なので、さらに単純化してとりあえず $J$ に もよらない場合というのを考えてみる。これには、なかなか特別な、 空間上の各点で速度分散が等方的であるという性質がある。これはどういうこ とかというと、一般にある方向の速度分散というのは

\begin{displaymath}
<v_e^2> = {1 \over \rho} \int v_e^2 f(v^2/2 + \Phi)d{\bf v}
\end{displaymath} (14)

となるが、 $f$$v$ の絶対値にしかよらないので、 $v_e$ の方向にこの 積分はよらない。まあ、速度分散がとかいうより、速度分布自体が等方的なの だから当然ではある。

以下、扱いやすくするために変数をとり直す。

\begin{displaymath}
\Psi = -\Phi + \Phi_0, \quad \quad \quad {\cal E} = -E + \Phi_0 = \Psi
- v^2/2
\end{displaymath} (15)

ここで $\Phi_0$ は定数で、普通は${\cal E} > 0$$f > 0$, ${\cal E} \le
0$$f = 0$ となるようにとる。

これらを使って、さらに$v$の角度方向に渡って積分すれば

$\displaystyle {1 \over r^2} {d \over dr} \left(r^2{d \Psi \over dr}\right)$ $\textstyle =$ $\displaystyle -16\pi^2 G \int_0^{\sqrt{2\Psi}} f(\Psi - {1 \over 2}v^2)v^2 d{\bf v}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle -16\pi^2 G \int_0^\Psi f({\cal E})\sqrt{2(\Psi - {\cal E})} d\cal E.$ (16)

これで、一般に $f$ を与えて $\Psi$ を求めるとか、あるいはその逆とかが 出来る。

ただし、 $\Psi$ を与えて $f$ を求めようってときには、求まった $f$$f\ge 0$ の条件を満たすという保証はないので、そういうのは物理的には意 味がない解ということになる。



Jun Makino 平成21年4月20日