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8.1 数値積分における外挿

陰的ルンゲ・クッタとガウス・ルジャンドル多項式による数値積分の関係にみ るように、数値積分と常微分方程式の数値解法には密接な関係がある。理論的 には、これは結局リプシッツ条件のもとで、常微分方程式の数値解は数値積分 で近似できるということから来る。

線形多段階法も、多項式近似した上で数値積分する方法というふうに理解でき る。このような方法で非常に高い次数を達成しようとすると、計算量、メモリ の必要量がどんどん増えてしまって現実的ではなくなる。また、あとで述べる ように安定性や収束性の問題もおきてきて、非常に高次の方法というのはかな らずしも実用的ではない。

では、もう少しうまい方法はないかというのが問題である。

例えば、数値積分において、簡単な台形公式を使った場合を考えてみる。これ で刻み幅をいろいろ変えれば、誤差は大雑把にいって刻み幅 h の2乗に比例 するはずである。

つまり、例えばある刻み幅 と、別の刻み幅 で計算した答の誤差は、 それぞれ、ある(共通の)定数 C を使って

と書けるような気がする。これをさらに言い換えると、積分の近似値 が、真の値 S を使って

さて、この式から、「Sを求める」ことが出来る。つまり、

としてやると、「真の値」が求まってしまう。

図にするとこんな感じかな:

要するに、 に対して誤差が一次式で書けると信じて、 での積分の値を求めてやるわけである。

もちろん、これで本当の真の値が求まるわけではない。というのは、いうまで もなく上の誤差が という形で書けるという仮定が厳密には正しくない からである。これは誤差の主要項であるに過ぎないので、この項を消せば次の 項が出てくる。具体的に次の項を考えてみると、

と書けるとすれば、これから求めた「真の値」は

となって、結局 4 次にしかなっていないということがわかる。

なお、ここで 2 次の項の次が 3次ではなくて4次になるとしたが、これは台形 公式でも中点公式でもなりたつ特別な性質である。

さて、こうなると、次は の項も消せないかという欲が出てくるであろ う。実はそういうことも出来るわけで、そのためには の2個 ではなく、さらにもう一つ別の刻み幅で積分してやればいい。そうすると、

と近似して、 の両方を決めた上で S の高精度の推定値を 作ることが出来る。これは、結局 S(h)を の関数として2次多項式近似 していることになる。



Jun Makino
Thu Aug 13 14:18:16 JST 1998