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8 専用か汎用か?

このような専用計算機と、汎用計算機は どういう関係にあるのであろうか?私は、双方が競争するこ とによって初めて健全な発展が図れると考えている。汎用計算機の上でア ルゴリズムを開発すると、どうしても現在利用可能な計算機アーキテクチャに よって思考が制限される。現在利用可能な計算機アーキテクチャというのは必 ずしも他にあり得ないという必然的なものではないので、これではいろいろな 可能性を見落としていることになる。

それに対し、専用計算機を作るという場合には、今度はアーキテクチャが計算 機を作る人のアルゴリズムや問題についての理解、さらには計算機技術に対す る知識の程度によって制限される。その全体が統合されないと、なかなか満足 に動くものはできないのである。そのかわり、汎用計算機とは全く違ったアー キテクチャをとることでより高い性能が実現できることもある。 GRAPE では それなりの成功を収めたといってよいであろう。

GRAPE がそれなりの成功を収めたのは、 粒子系のシミュレーションが専用計算機に極めて適した問題であったためとい う面は無視できない。粒子間相互作用の計算が計算全体のほとんどを占め、こ れはツリー法や高速多重極展開法などの洗練された方法を使っても変わりない[8]。 このため、比較的簡単な粒子間相互作用を計算するハードウェアと、アルゴリ ズムの複雑な部分を処理する汎用計算機を組合わせることで、非常に多様な応 用をもつシステムを構築できるからである。

これに対し、同じような大規模数値シミュレーションでも、格子を使った流体 計算などの場合には、状況はかなり違ってくる。多くの場合に、計算のこの部 分が一番大変といったものが明確ではなく、格子点の数が多いということで全 体の計算量(と必要メモリの量)が大きくなっているからである、この場合に は、結局はプログラマブルな超並列計算機のようなものが有効であるように思 われる。もっとも、非構造格子とか適応格子とかいう話になるとどうすればいい かよくわからないということもあり、なにか新しいアプローチが必要かもしれ ない。



Jun Makino
Mon Jun 14 18:22:57 JST 1999