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5 多体問題専用計算機との関係

筆者らのグループでは、粒子間相互作用を計算することだけに特化した計算機 を開発し、実際に天文学の研究に使っている [16][17]。FMMやツリー法のような速い方法 があるのに、こういった計算機を作ることに意味があるのだろうか。

我々が専用計算機というアプローチをとる理由は2つである。一つは、粒子毎 にタイムスケールが大きく違うような問題では、ツリー法や FMM を使うのは 非常に難しい、特に並列計算機で使えるような実現法はまだ存在しないという ことである。

もうひとつの理由は、ツリー法も FMM も、実は直接計算の部分を高速化する だけでかなり速くなるということである。すでに述べたように、多重極展開の 計算量と直接計算の計算量の間にはトレードオフが働く。このために、粒子間 相互作用の計算が例えば 100倍高速になれば、セルのなかの粒子数を10倍にす ることで計算全体を 10 倍速くすることができる。つまり、粒子間相互作用の 計算速度の平方根に比例して計算速度が改善される。ツリー法でも事情はほぼ おなじであり、実際に10-30倍程度の加速が実現されている[18]。さ らに、前節で述べた PM法を使えば、セル間相互作用も高速化でき、 特に高精度の場合に大きな高速化が達成できる。



Jun Makino
Thu Nov 26 22:10:48 JST 1998