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Cluster of Galaxies Dark Matter の
階層構造
(?)

牧野淳一郎

東京大学大学院総合文化研究科

概要

  1. 前おき
  2. 観測とその解釈
  3. 観測の解釈の解釈
  4. 数値実験とその解釈
  5. 数値実験における困難
  6. まとめ

前おき

なぜ銀河団暗黒物質の階層構造という話をするのか?

どうも観測 --- 数値実験 --- 解釈(理論)の関係がすっきりしない。

一応、全体を再構成して、いったいどういう話かを考え直してみる。

「観測事実」

「階層構造」

Hydra A クラスタの ASCA による観測

Hydra A のX線ガスの構造

``Single モデルではフィットできない''

``Double モデルではフィットできた''

Fornax 銀河団のダークマターの構造

(池辺、博士論文)

50---100 Kpc あたりで落ち込む

= 力学的に独立な 2 つの構造?

別の解釈 = Cooling Flow

理論的には:

  • 中心で「 温度が下がっている」
  • 中心で Cooling time が宇宙年齢より短い

放射で失われているエネルギーを、内向きのガスフローで供給 する必要がある。

= Cooling Flow

問題点

  • 中心にいったガスはいったいどうなるのか?
  • それ以外の解釈はないのか?

Cooling Flow Cluster の例

Edge et al. MNRAS 1992, 258, 177

EXOSAT + EINSTEIN, A496

  • 典型的には中心で1桁近く温度が下がる

解析はなにをやっているのか?

疑問:

「階層構造」と「Cooling flow」:いったいどういう関係なのか?

要するに、それぞれどうやって解析しているのか?ということ。

= 「 モデルとは何か?」ということ

どちらのモデルも、 「 モデルで合わないものを説明する」という論理になっている。

通常の説明:

モデルとは

モデルとは何か?

等温分布の方程式:

ガスの速度分散=恒星系の速度分散なら、ガスの方程式:

は星とDMの合計)

解:

ガスと恒星系(無衝突物質)の温度比:

ガスの密度が従う方程式:

解:

温度が高ければ等温解に比べて傾き が緩くなり、低ければより急になる。

等温解と モデル

以下の質量分布

を考える。

これは 程度ならば等温解の非常によい近似になっ ている。これを恒星系の分布と思えば、ガ スの分布は

と解析関数で書ける。 X 線の強度は、これは密度の2 乗を視線方向で積分したものと思っていい。つまり

となるわけだが、これは積分できて、

では?

等温解と モデル

実線:等温解

破線:モデル

結構すぐに合わなくなる

「階層構造」の論理

「単一 モデルでは合わない」

残りをもう一つ モデルを持ってきて合わせる

ダブル で合わせると観測結果は誤差の範囲で説明出来る

「もっとも単純なモデル」

問題点

ダークマター(+星)の分布に モデルを仮定する必然性はない

モデルを2つ重ねる」ことの物理的な意味が明確でない。

でもそのまま使われている

2つ重ねるから、滑らかにならない=DM分布の「階層構造」の起源

「Cooling Flow」の論理

「単一 モデルでは合わない」

ずれは温度分布のせいであるとする

温度がきちんと決まっている観測はないので、あらゆる観測に 合わせられる

問題点

ダークマター(+星)の分布に モデルを仮定する必然性はない

でもそのまま使われている

「Cooling Flow」?

原理的な問題点:温度が決まってない

ASCA の分解能ではほとんどの銀河団で中心を分解できない

ASCA で温度を決めるのは非常に難しい(PSFが複雑怪奇)

EINSTEN, ROSAT は温度がわからない(keVあたりまでしか測れない)

確実にいえること:

「ダークマターの分布は モデルとはだいぶ違う」

数値実験とその解釈

観測は難しそうなので、理論(数値実験)でなにかいえないか?

宇宙論的N体計算で銀河団のダークマター分布がどうなるか調べよう!

Navarro, Frenk, White (1996, 1997)

「高分解能」N体計算でなにが出来るか調べた

結果: ``universal profile''

NFW の結果

もしも NFW が正しければ、、、

Makino, Sasaki Suto (1998, ApJ 497, 555) は NFW profile のもとで静水圧 平衡の式をといて、 X線ガスの分布を求めた。

NFW を信じられるか?

NFWの計算:ハロー一つに典型的には 体程度

問題点:中心部での二体緩和時間が宇宙年齢よりはるかに短い

緩和時間を「十分長く」した計算は出来ないか?

とにかく粒子数を増やしてみよう

Fukushige and Makino 1997 (ApJ 477, L9)

  • NFW がいっているような中心で になる分布にはならない
  • 程度になった
  • 信用できるのは1-2kpcまで

Moore et al. (1998, ApJ 499, L5) も同様な結果

Fukushige & Makino の結果

NFWの結果の解釈

  • 「universal」になったのは数値計算の誤差のためであった(すべての計算で粒子数が 同じ程度、ソフトニングパラメータも同じ程度だったので、結果がその2つで 決まっていた)。

  • ちゃんと計算したらどんなものができるかはまだわからない。

Fukushige & Makino : GRAPE-4 で1週間

Moore et al.: 計算機等不明

どこでもできるような計算ではない

まとめ

  • 「観測から示唆される階層構造」というものが、モデル化と解釈による artefact でないと判断するのは難しい

  • 数値実験からは、かりに standard CDM とかモデルを決めても、クラス ター内のダークマターの構造についてはっきりしたことをいうのは結構難しい

言い替えれば、、、、

  • 高分解能の観測(特に 10 keV程度で空間分解能の高い観測

  • 高精度(大粒子数)のシミュレーション

が、現在の理解とはまったく違った描像をもたらす可能性はそんなに低くない

  • AXAF

  • GRAPE-6





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Jun Makino
Sat May 23 00:38:37 JST 1998