8. TA100 による食品中セシウム検出その5福島林檎検証篇 (2011/12/17)
というわけで、数日前にきてたんですが、国立天文台でのリンゴの測定結果
の数字の報告です。
Cs134 137
芯 42 54
果肉 36 58
皮 48 83
数字は Bq/kg、測定は12時間で、カウント値は一番低いものが 400 です。カ
ウントがかなり低いのはサンプル重量が 25-55g と少ない測定をしているため
です。皮は若干多いのですが、それほど大きな差はなくて 134, 137 ともに
50Bq/kg 前後です。TA100 での測定では1:1 としてそれぞれ30Bq/kg 程度
と推定していたので、倍は違わない結果です。なので、TA100 でこのレベルな
ら検出可能と確認できた、いえるでしょう。
このGe 測定のほうの数字の絶対値のキャリブレーションは若干間接的で、
-
絶対感度は KCl のカウントから
-
エネルギー依存性は Cs-134 の複数のピーク間の比から
出しています。倍違っていることはないと思いますが、ちょっとこれ多めでは
ないかという気もします。とはいえ、倍違うとしても少なくとも Cs-134, 137
で合計 50Bq/kg はあるものがコンビニで普通に販売されている、ということ
です。もちろん、暫定規制値の 1/5 ないし 1/10 なので、出荷されるわけで
すが、個人的にはこれを買って食べるのは避けます。
福島県は日本のリンゴ生産量の4%程度のシェアをもっているとのことで、
ランダムに食べると平均 2-5Bq/kg 程度です。但し、加工用の材料等
は安価に調達可能である可能性がある福島産が選択的に使われている
かもしれない、ということも考慮したほうがよいと個人的には思います。
(以下 2011/12/21 追記)
図 69 に、測定精度を上げるために、バッ
クグラウンドは7日分を合計、福島リンゴの測定は3日分を合計したものを示し
ます。縦軸は 24 時間当りのカウントに正規化しています。0.3-0.8MeV の積分
カウントは 85 くらいになっています。1日のデータではほぼ2日(正確には45時
間弱)のカウントで150 程度でしたから、1日当りにすると 80 程度です。そ
れぞれ誤差が20-30 (1σ)あることを考えると一致しすぎ程度に良くあっていま
す。前回の結果が(統計は3σとはいえ他の要因等による)誤検出ではなく、
確実なものであるということがより強くいえたと考えます。
Figure 69: 福島県産リンゴ。2個のリンゴを合計24万秒測定。バックグラウンドは
56万秒測定。24 時間当りのカウントに正規化。
上に書いたようにこのリンゴは 100Bq/kg 程度と思われるので、その程度の検
出に1日もかかるのでは話にならないという考え方もあるとは思います。
まあ、同じ値段でも TC100S なら半分程度の検出限界、50万円の TN100 なら
さらに半分となって業者に依頼したり機械をレンタルして 1 時間程度測定す
るのと同等な精度が実現できます。
高価な装置を専門家が使わないと食品は測定できないというふうにとられかね
ない主張をする人は多いのですが、個人が購入できる20万円程度の装置で、
50Bq/kg を検出することは時間をかければ十分に可能です。