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7. 朝日新聞記事における牧野の文章の不適切な利用について(2020/7/8; 2020/7/11、12追記)

朝日新聞7月7日記事 新型 コロナ、第2波来てる? 基準になる数字を整理した(伊藤隆太郎)に、 以下の文章があります。

   神戸大の牧野淳一郎教授は科学誌の連載で実効再生産数について「専門家
   会議はまったく意味がないデータをもってきて、見解を出したことになる」
   と批判した。 
これは「科学誌の連載」と書いてあって出典が示されていないので、私のどの 文章なのか明らかではないのですが、おそらく、岩波「科学」 2020年6月号の記事の以下の文章

  極めて信じ難いことですが、「専門家会議」は、全く意味がないデータをもっ
  てきて、

     3月上旬以降をみると、連続して1を下回り続けています

  という見解をだした、ということになります。
を改変した上で利用したものと思われます。

これには、以下の問題があります。

  1. 「」をつけて引用であるかのごとくみせているが、「3月上旬以降をみる と、連続して1を下回り続けています」の部分が断りなしに削除されており、 内容が改変されている。その他にも文章に勝手な変更がされている。元々 の私の文章は「3月上旬以降をみる と、連続して1を下回り続けています」という特定の記述、主張に対する ものであるが、その部分を勝手に削除することによってそのことがわから なくなっている。

  2. 岩波書店の雑誌「科学」6月号記事からの引用であるにもかかわらず、適切な 出典が示されていない。

これは、朝日新聞社サイトの 「著作権について」 の「引用」の部分にある

    引用部分がはっきり区分されていること。引用部分をカギかっこでくくる
    など、本文と引用部分が明らかに区別できることが必要です。 

    さらに、「出所の明示」も必要です。通常は引用部分の著作者名と著作物
    名を挙げておかなければなりません。朝日新聞デジタルの場合は「○○年
    ○月○日朝日新聞デジタルより」といった表示が必要になります。 
に反するものであり、私の文章に対する著しく不適切な利用であると考えます。

朝日新聞社にはただちに適切な対応をすることを求めます。

(以下 7/11 追記)

上の趣旨で朝日新聞に意見を送っていたところ、昨日回答・記事の修正があり ました。記事の修正は

   神戸大の牧野淳一郎教授は科学誌の連載で実効再生産数について「専門家
   会議はまったく意味がないデータをもってきて、見解を出したことになる」
   と批判した。 
の部分が

   神戸大の牧野淳一郎教授は岩波書店の科学誌「科学」の連載で実効再生産
   数について、専門家会議の見解は数値を過小評価していると批判。3月19日
   に専門家会議が「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」とし
   て出した資料についても「専門家会議はまったく意味がないデータをもっ
   てきて、3月上旬以降をみると、連続して1を下回り続けていますという見
   解をだしたことになる」と批判した。
となっています。朝日新聞の基準であるところの

   朝日新聞デジタルの場合は「○○年○月○日朝日新聞デジタルより」といっ
   た表示が必要になります。
と比べると、「岩波書店の科学誌「科学」の連載」は「岩波書店の科学誌「科 学」6月号で」等であるべきと思いますが、改善はされています。一方、西浦 氏が同じ記事について 今日のツィート

   ここの「」引用部について直接記事のための取材は受けたことがありませ
   ん。「取ってかわられた」という表現もしていません。再生産数の要件な
   ら対応するのに。。 
と述べており、この記事にはまだ他にも同様な問題があるようです。

(以下 7/12 追記)

西浦氏のところも

  厚生労働省クラスター対策班の北海道大学の西浦博教授は「我々は最初、再
  生産数で議論していたが、いつしか倍加時間に取って代わられた」と明かす。
であったものが

  厚生労働省クラスター対策班の北海道大学の西浦博教授は、5月12日に日本
  科学技術ジャーナリスト会議が開いた会見で「実効再生産数を使って報告を
  していたのが、倍加時間というものに置き換わって評価が進んでいる」と述
  べた。
と修正されました。
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