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98. 福島原発の事故その2 (2011/3/25 書きかけ)

前項が専門的すぎてなんもわからん、という絶賛の声を多数(嘘だけど)いただ いたので、わかるようにかけるかどうかがんばってみます。

98.1. 放射線とか放射能とかって何?

えーと、ですね、放射線というのは、電波とか光と同じ光子や、あるいは 電子、ヘリウム原子核等が高速で飛んでいるもののことです。

光子の場合は高速といってもあらゆる光子は全て光速で動くのですが、光子1つ の持つエネルギーと波長(私も良くわからないのですが、量子力学によると粒子 と波は同じ、という例のアレです)に関係があって、エネルギーの高い光子は短 い波長をもちます。光子で非常にエネルギーが低いのが普通の電波で、例えば ギガヘルツ帯(携帯等に使われているはず)では数センチです。目に見える普通 の光は1ミクロン(1/1000ミリ)程度です。原発とかで関係するのはγ線という名 前がついていて、目に見える光よりさらに 6 桁程度波長が短く、エネルギーが 大きいものです。大きなエネルギーを持つγ線は、原子にあたると電子をはじ き飛ばしたりします。そうするとその原子を含む分子が壊れたりするわけで、 体の中のタンパクや、遺伝子を作っている DNA が壊れて、色々な害、特に DNA が壊れてガンになったりするわけです。

ちなみに、代表的な放射線は α線、β線、γ線、中性子線です。

α線、β線、γ線は19世紀末から20世紀初頭に発見されたもので、これらは 放射性元素からでるものだということがわかりました。α線はヘリウム原子核、 β線は電子で、γ線は上に書いたように光子です。

放射性元素の原子核は何かと反応するわけではなく、勝手にある確率でこれら の粒子を打ち出して別の元素に変わります。例えば、131I、これは と131を上に書くのが本当で、陽子 51個、中性子80個の合計131個 から原子核ができていることを示すのですが、以下面倒なので 131I とします。 これはβ線とγ線をだしてキセノン (Xe) に変わります。β線を出すので中性 子が一つ減って陽子が増え、原子番号が52 になるわけです。この、β線を出す ことを、β崩壊ということがあります。 β崩壊というとβ線だけを出すのかと思いますが、γ線の他ニュートリノとい う殆ど観測できない素粒子もだしたりします。

137Cs (セシウム) も同様にβ崩壊し、137Ba(バリウム)に変化します。放射性 元素の中にはα崩壊するものもあります。

α線は(素粒子物理的には)大きな粒子で、簡単に他の原子とぶつかるので、 あまり長い距離を飛ぶことはありません。紙1枚でさえぎられる、ということ だそうです。β線は空気中では8cm 程度しか飛びません。 γ線はこれらよりもずっと長い距離をとび、大気中では200m程度で強度が半分になる、 つまり、沢山同じ方向にγ線がとんでいると200mくらい飛ぶうちに数が半分に なります。

マスコミ等で、放射性の強度は距離の2乗で小さくなる、とかいっていますが、 そういうわけで、どこかに塊である放射性物質(放射性元素を含んだもの)から の放射線はもっと急激に小さくなります。例えばβ線の場合 1mで1/2000 にな るわけです。γ線でも、2km で 1/1000、20km では1000兆分の1 になるわけで す。

98.2. じゃあ、どうして原発からずっと離れたところで放射線が?

これは、原発にある放射性物質からでる放射線ではなくて、離れたところまで 風にのってとんできた放射性物質からでる放射線です。原発で何度も起こった 爆発の時にまきちらされたり、あるいは水蒸気と一緒に舞い上がったヨウ化セ シウムや水酸化セシウムの微粒子が、風ににのって何十キロ、何百キロも 飛んできているのです。

98.3. 報道では、放射線の強度って上がってもすぐさがってるけど、これはどうして?

主な理由は、風にのってきたものがそのまままた風にのってどこかにいって しまう、ということです。(多分)でも、一部は残っていて、福島県のある場所では最 大 180マイクロシーベルト/時、関東の色々なところでも事故前の値の2倍以上になっ たりしています。

98.4. でも、段々弱くなってる、ってテレビでいってたよ?

これは、放射性元素がβ崩壊して、別のものになってそれはもう放射性をもた ないものだからです。 131I は8日間に半分が崩壊して、半分が残ります。 なので、1日で 9パーセントくらい放射性強度が下がることになります。3ヶ月 たったら 1/2000 しか残りません。 137 Cs は30年でやっと半分になります。

98.5. ミリシーベルト/時ってどういう意味?どれくらい危ないの?

大雑把にいうと、シーベルトというのは放射線の単位ですが、重量あたりのエ ネルギー、という少しわかりにくいものです。

人が体重1キログラムあたり131I の原子核20兆個が崩壊してできたγ線を吸収 すると、1シーベルトということになります。137Cs でも同じくらいです。 どちらの崩壊でもβ線はγ線より高いエネルギーを持つので、β線も入ると 1/3 程度の6超個くらいです。体重50キロの人が1シーベルトの被曝をした、と いうことは、131I でβ、γ両方だと大体100兆個の原子核が全部壊れた分、 ということです。

ミリシーベルト、というのは、上のシーベルトの1/1000 の放射線を1時間で、 ということですから、γ線だけだと体重50キロの人で3000万個の原子核の崩壊 分です。

98.6. じゃあ、報道での強度って、γ線だけ?β線もはいる?

測定しているのはγ線だけで、β線の分は数えられてないです。それは詐欺じゃ ないか、というと、β線は遠くまで飛ばないので、遠くにある放射性物質から の被曝なら無視して大丈夫です。でも、空気中のごく近くに放射性物質がある とか、地面にあるとか、服や皮膚についてしまったとかいうと駄目です。 131I, 137Cs とも、地面に残ったり、最悪の場合体内に取り込まれたりします。 この時には両方数えないとおかしいわけです。

98.7. 比較している、自然放射線ってのは?

これは、宇宙線起源のγ線、β線や、身の周りの物質に微量含まれている放射 性元素からでる放射線です。β線は飛距離が短くて宇宙からこないし、γ線も そうでは?と思うわけですが、宇宙から飛んでくる宇宙線が大気の色々な原子 と相互作用して色々ややこしいことをした結果β線やγ線を出すのです。

報道ででていた日本での自然放射線の値は年間 1ミリシーベルト、とかが多くて、 これは1時間当りだと 0.1 マイクロシーベルト/時です。一方、 自然放射線の値、として報道ででていたものは大体 0.05-0.08 くらいになっ ていて、これはγ線だけ、残りはβ線と考えられます。あ、すみません、あと、食物からのもあります。

98.8. で、どれくらい危ないの?

1シーベルトくらいの放射線被曝から、すぐに死ぬ人がでてきて、6シーベルト で殆ど全部死にます。これが急性障害というもので、報道でいう「すぐに人体 に危険がある」というものです。

では、すぐではない人体への危険、ってのはどうか、というと、1シーベルト 被曝して急性障害で死ななかった人が男性、女性それぞれ 1万人いたとして、 男性800人、女性1000人がこの被曝が原因のガンで死ぬ、というのが、 広島、長崎の被曝者の調査等からわかっていることです。

ガンになる割合は、調査データがある割合大量の被曝では、受けた放射線の量 に比例するとわかっています。なので、1ミリシーベルトでは 1万人に一人が 放射線が原因のガンで死ぬ、ということになります。自然放射線は例えば80年 間に200ミリシーベルトなので、1万人のうち 200人くらいが自然放射線が原因 のガンになっているかもしれません。但し、自然放射線と、原発からでる、人 工の放射性物質で効果が同じかどうかは不明です。

30キロ圏のだいぶ外側でも原発からの放射性物質のための放射線レベルが20マ イクロシーベルト程度まで上がった地域がありますが、これは主に131I からの 放射線だとわかっています。131I は8日で半分になるので、8ミリシーベルトく らい受けることになり131I だけでは大したことはありません。但し、まだはっ きりしていませんが放射線強度としては 131I の 1/100 -1/200 程度の 137Cs があるかもしれなくて、半減期(半分になる時間)が1400倍違うので、受ける放 射線の量は10-50 倍、もしも50倍だと 400ミリシーベルトになって、100人に4 人が原発事故の放射線が原因のガンで死ぬ、ということになります。β線も考 えるともうちょっと多いかもしれません。この辺で人間が住んでいいとはいい がたい、という感じで、その10倍になると確実に駄目なレベルです。20キロと 30キロの間にはそういう場所もみつかっています。

特に 131I の場合、体内に取り込まれると甲状腺に集まってここを集中的に攻 撃してガンを発生させる、という性質があります。なので、微量でも雨や チリに含まれた 131I を吸い込んだり、あるいは農産物に含まれる 131I を摂 取したりしないようにする必要があります。 3/19 くらいから、規制値以上の 放射性物質が色々な農産物で見つかっています。規制値は、上のガンになる割 合がまあまあ小さいように設定されている「はず」です。

98.9. 広島の爆心地だって放射線は大したことないのでは?

その通りで、福島第一原発の周りのは現在の広島の爆心地より放射線レベルが 高いところができているかもしれません。理由は2つあって、広島原爆では核分 裂を起こした 235U は1kg 程度といわれていますが、原発では燃料は100トン、 そのうち 235Uが3トン、核分裂を起こた分が1トンくらいあるので、半減期が長 くてなかなか減らない物質が広島の原爆の1000倍くらいあり、そのいくらかが 既に外にまきちらされたことが一つ。

もう一つは、原発からの放射性物質は風で運ばれて、雨が降った時に落ちる、 ということがあり、風向きや雨の降り方等によって放射性物質が集まって沢山 ふる場所がある、ということです。これはチェルノブイリの事故でも見つかっ ています。

98.10. チェルノブイリと比べて?

以下、単位の換算が正確ではないので、数倍間違っているかもしれません。そ こに注意して読んで下さい。

放射性物質が放出された量、というのはまともな発表がないので良くわからな いのですが、放射線の強さをあちこちで測定しているのでそれをチェルノブイ リの場合と比べることができます。日本のデータは原発から 30kmの距離で、 180マイクロシーベルト/時をしばらく記録した(131I がメインだと思うので段々 下がる)というものです。

これにたいして、チェルノブイリの場合、30km圏境界での最大値がセシウムで 100キュリー/平方キロ、というものです。キュリーというのは放射性物質の量 をはかる単位で、一方マイクロシーベルト/時は放射線の強さですが、 これは換算が可能で私の計算が間違ってなければ(若干自信がないです) 1マイクロシーベルト/時が大体10キュリー/平方キロになります。なので、 チェルノブイリの値は 10マイクロシーベルト/時で、福島県の数字の 1/18 にしかなりません。

といっても、ここでびっくりしてはいけなくて、放射性元素が違います。チェ ルノブイリでは 131I がなくなったあとの 137Cs を測っていて、福島では 131I がまだメインの状態です。最初の頃の放射線強度としては40倍くらい 131Iが強いので、チェルノブイリは最初は 400マイクロシーベルト/時あったこ とになります。

なので、倍違う、ということです。倍しか違わない、ということでもあります。

最大値同士を比べて意味があるのか?という問題はあるのですが、大雑把な目 安にはなって、10倍違う、ということはないのではないかと思います。つまり、 放出した放射性物質の量に関する限り、チェルノブイリより多くはないかもし れないけれど、少なくとも 1/10 程度にはなっているであろう、という感じで す。

98.11. それって大変なことじゃない?

福島県の、上の 180マイクロシーベルト/時のところは大変です。セシウムで 5マイクロシーベルト/時だとすると、年間 50ミリシーベルト/時になって人が 住んではいけません。30年いると 1.5 シーベルトの放射線で、 100人に12人 がガンになる、というとんでもない数字だからです。

もっとも、セシウムの量がこれからどうなるかはまだわかりません、日本は幸 いなことに非常に雨量が多い国であり、セシウムは水に良く溶ける物質なので 水に流されてくれるかもしれないからです。山間部では特にその可能性が高い と思います。チェルノブイリ近辺は、例えばキエフでの年間雨量が 400mm く らいと、日本とは全く違う気候です。

核物理的な半減期は30年ですが、そんなに長く待つことなく水に流れてくれる かもしれないわけです。とはいえ、これはそういう希望もある、ということで、 時間がたってみないとわかりません。

(ここから 4/3 追記)

少なくとも水田、畑ではあまり水に流れない、ということのようです。詳しく は 99 に。

(ここまで 4/3 追記)

で、現在の数字が 10マイクロシーベルト、1マイクロシーベルトのところはど うなんだ?ということですが、これは、それぞれ(水に流れないとして)100人に 1人、1000人に1人程度ガンが増える、ということです。どれくらい増えるのを 我慢するか、というのは、民主主義国家であるはずの日本では、本来主権を持 つ国民全体、あるいは実際にに退避することになる住民が判断するべきことで あって専門家が適当に決めていいわけではないですが、他の色々な危険や、退 避することのコストによって決める、といったことになるのではないでしょう か?

(ここから 4/10 追記)

なお、低レベル放射線については、上に書いたより害が大きい、という議論もあります。 詳しくは 99 に。

(ここまで 4/10 追記)

131Iが体内に入ると甲状腺に集まって甲状腺ガンを増やす、ということがある わけですが、これについては国際標準の規制値がきまっていて、年間 20ミリシーベルトとなっていま す。これらがどれくらいガンを増やす数字なのかは実ははっきりしません。

この 20 ミリシーベルト/年って、非常に大きい、と思ったのではないでしょ うか?全身に受ける普通の放射線については、規制値は1ミリシーベルト/年 なのでその20倍です。 これは、「シーベルト」が人体の重量当りで、これは甲状腺の重量当りだから です。甲状腺は 15-20グラムぐらいで、そのこととか他の色々を計算すると、 20 ミリシーベルトは大体100万ベクレル、となります。 「ベクレル」というのはキュリーと同じ放射性物質の量の単位ですが、 1キュリーが370億ベクレル、と定義されています。なので、100万ベクレルは は 0.03ミリキュリーになります。

牛乳や水の規制値が300ベクレル/キロといった報道をみた人も多いと思います。 私の計算がどこか間違っていなければ(しばしば間違えるのですが、、、)牛乳 の 300ベクレル/キロは 100万ベクレルになるには3000リットル飲め、という量で なかなか大きいです。

もちろん、牛乳以外の色々なものが汚染されている かもしれないので、牛乳だけで規制値までになっては駄目で、 1/10 から 1/100 程度でないといけません。

とはいえ、 今回の原発からでた 131I は8日で半分になってしまうので、実は1年間飲むと いうことはなかなかないはずです。という意味では、今回にかぎってはもう少 しゆるい規制値にしてもよいかもしれないという気もします。

なお、意外に危険かもしれないのが、地面に落ちたヨウ素が砂ホコリと一緒に 風で巻き上げられたものを吸い込んでしまう、とか、アスファルトの道路で車 が巻き上げたものを吸い込んでしまう、といったことです。1マイクロシーベル ト/時くらいのところだと、 10キュリー/平方キロなので 0.03 ミリキュリーは 3平方メートル分です。1週間のうちにそんなに吸い込むことはない、というと そうかもしれないですが、牛乳と同じでこれだけで規制値になっていいもので もないので。

98.12. 原発は今どうなってるの?

詳しいことは 97 に書いたのです が、要するに、

ということです。地震のあと、原子炉はちゃんと停止したのですが、ウラン (235U) の核分裂でできた色々な放射性元素がα崩壊やβ崩壊をして熱をだし ます。この熱が結構莫大なもので、事故後10日近くたった今で大体原子炉1つ 当り 5000キロワットくらい、水で冷やすとすると1時間で50トンの水を 100度まで上げるか、10トンの水を蒸発させる必要があります。

燃料ウラン(酸素との化合物をセラミックにしたもの)は実際の原子炉では細い 金属パイプの中にはいって水につかっています。普通はこの水が原子炉の中で 沸騰して、それが蒸気タービンにいって発電し、でてきた蒸気を海水で冷やし てまた原子炉の中に戻します。普通に原子炉を止める時には、まず核分裂反応 は起きないようにして、それでもでてくる熱は炉内の水を循環させて、それを 海水で冷やす、ということをずっと続けるわけです。でも、福島第一では 原子炉を止めたあと停電があって、ここが上手く回らなくなりました。 さらに、自家発電用のジーゼルエンジンが2台ずつあったのですが、 これが 1-4 号機では全部故障し、さらに非常電源のバッテリーも数時間で あがり、と原子炉をひやせなくなりました。このため、別途水をいれないとい けなくなったのですが、新しく水をいれるには元々あったものを出す必要があ ります。というわけで、結局事故から現在までずっと、原子炉の中に水をいれ て、それが沸騰して蒸気になってでていく、ということになっているようです。 この蒸気に I と Cs がちょっとですがまざってでていっていて、福島県の色々 なところとか、 3/20, 21 には関東の広い範囲に雨とともに降ってきています。

水をいれなければ水蒸気にならないか、というと、残念ながら今度は燃料自体 が高温になって溶け、一部蒸発したり、原子炉の底や建物の床を全部溶かして 地面にもぐっていくかもしれません。そうすると地下水と接触して水蒸気爆発 とか、極めて危険なことが起こるので、そうならないように今がんばって水 をいれているわけです。

98.13. これからは?

発熱は3年くらい立つと、1000キロワットくらいになり、放射線レベルもだいぶ さがってきます。そのころになると、チェルノブイリでやったようにコンクリー トで固められますが、これも外側から水で冷やす必要があります。

3年間水を消防車でかけ続けるわけにもいかないので、発電所にあるポンプと かをなんとか復活させよう、というのが 3/22 現在やっている作業、というこ とになります。海水を循環させられるようになれば、大気中にでてくる放射性 元素はだいぶ減るでしょう。そのかわり、海にでていくことになります。これ を3年間続けるのはよろしくないので、原子炉を冷やす水を、捨てるのではな くさらには別の水で冷やす、というふうに最終的にはする必要があります。

というわけで、まだしばらくは(数日か数週間か数ヶ月かわかりません)、 福島第一原発のあちこちから放射性元素のまじった蒸気か煙がでていて、 風にのって動いて雨が降るとそこに沢山落ちる、という日々が続くかもしれま せん。

98.14. 放射性物質がふってくるって、それ、大丈夫なの?どっかに避難しなくていいの?

色々なところ(最後に場所のリストをつけます)で放射性のレベルをモニタリン グしていて、それによると大抵、1時間以内の短い時間で急激に上昇し、また下 がるんだけど元には戻らない、というのの繰り返しで段々上昇していきます。 つまり、空からいつでも放射線がふってきているわけではなくて、場所によっ て集中してふってくる時がある、ということです。地面に落ちてしまったもの からの被曝は、上でみたように 10マイクロシーベルト/時になったらだいぶ心 配ですが、数時間でどうというわけではありません。但し、数年にわたってそ こに住むのは私には勧められません。

しかし、集中してふってきている時は、放射性物質がはいった雨が皮膚や服に ついたり、細かい雨つぶが口ははいってしまう可能性があります。どこにどれ くらいふってきそうか、というのは国のどこかで天気予報の計算結果をつかっ たシミュレーションで計算しているはずですが、公開はされていません。

何もわからないのは気持ちが悪い、「安全」と言われても、、、と思うな ら、色々な公開データを使って自分で考えてみるしかありません。

なお、 3/22 くらいから、東京の水道水で基準以上の放射性物質が検出 されるようになりました。3/23 時点では金町浄水場で、これは江戸川か ら取水しているので 3/21-22 に降下した放射性物質がでてきているもの と思います。これは、しばらく水道水は大量には飲まないようにしたほう がよいかもしれません。上の牛乳と同じで、今のところはそれほどの量 ではないですが。

また、海水中に基準の10倍とか100倍のヨウ素、という報道もあります。 これも、事故が始まって以来放出されtあ物質が蓄積しているものと思い ます。

上に書いたように、地面に落ちた放射性物質からの放射線を直接浴びる ことによる被害は今現在ではそれほど大きくはありません。が、 農作物ではすでに規制値以上の放射性物質が検出されるようになってき ており、また食物連鎖の上のほうにいる動物や、海では大型の魚では、 放射性物質が上のほうになるほど濃縮される、といった効果があります。

ふってくる直接の放射性よりも、水の安全、その他食品の安全、と いったことがこれから大きな問題になってくるものと思います。

98.15. 色々

98.15.1. 雨の影響って本当はどれくらいあるの?

3/24 現在まで、放射線レベルの大きな上昇が起こるのは、原発のほうか ら風がふいてきて、さらに雨がふっている時になっています。例えば、東 京では 3/21-22 と雨が続き、さらに弱い北風、東風がふいた時間帯があっ て福島原発からでたものがきそうな感じでしたが、ちゃんとやってきて放 射性物質を落としていきました。

22、23、24日はまた西風と南風もふらふらするような感じでしたので、宮城県は どうか?と思って 文部科学省の県別データを見ると、残念ながら福島県と宮城県はデータがありません。 宮城県のデータを見ると(単位はマイクロシーベルト/時)

 日     山元町   白石市     仙台市
 3/21   0.46     0.59        0.19
 3/22   0.37     0.51        0.16
 3/23   0.30     0.48        0.13 
 3/24   0.54     0.41        0.12
という感じになっていて、山元町では 3/24 にあがっていること、また、 白石市での下がりかたがスムーズでなく、おそらく若干飛来があったこ とがわかります。ちなみに、山元町と白石市はどちらも 3/16 には 1 を 超えた数字になっていました。また、相馬市役所のデータでは 3/22 午 後に大きく上がっています。原発の南のいわき市では 3/21 に大きく上 昇しています。

文部科学省としてデータを載せていない、というのは何かの意図がある わけではないと思いますが、結果的に汚染度の高い2県が表にない形になっ ています。

98.15.2. MOX 燃料ってなに?危ないの?

MOX 燃料というのは、使用済燃料から回収したプルトニウムを主に使っ た燃料です。ウラン235を核分裂させると、それからでた中性子の一部が ウラン238に吸収されて、これがプルトニウム239に変化します。これが、 ウラン235と同様に核分裂する性質を持つので、燃料に使えるわけです。

危ないか、というと、 四国電力の資料を見ると色々書いてありますが、もちろん電力会 社の資料なので結論は安全ということになっています。

但し、プルトニウムは自然界に存在しない物質です。何故存在しないか、 というと、昔はあったのですが、放射線をだして別の元素に変わったか らです。プルトニウムの中で特にプルトニウム241は 14年と半減期が 短く、α崩壊で大きなエネルギーを出すので発熱が大きいものです。 なので、使用済燃料と同じように、常に水で冷やす必要があるはずです。

もちろん、ちゃんと水で冷やすことができていれば問題ないですが、 今回の事故のように水で冷やすことができなくなると危険な発熱物に なるわけでです。

また、プルトニウムはウランと違って、水のような「減速剤」がなくても 核分裂できる、という、燃料として危険な性質があります。これも、普段 なら問題ないです。しかし、ウラン燃料の場合には水がなくなれば制御棒 がなくても核分裂は止まるのですが、プルトニウム燃料では必ずしもそう はならない、ということがあるわけです。3号機ではMOX 燃料が使われて いるので、色々悪いことが重なると核分裂の連鎖反応が始まることが絶対 にない、とはいいきることができません。

98.15.3. 今(2011/3/29)原発はどうなってるの?

1週間前から良くなったことがあるとすれば、時間がたったので燃料からの発 熱がちょっと減った、ということくらいで、良くなった方向の話は 特にありません。

98.16. 参考になるサイト

98.16.1. リアルタイムモニタデータ

単位、表示方法がバラバラですが、例えば茨城県で急に数字があがると、風が 千葉とか東京にまでくる可能性が高いので、注意したいところです。 Gy(グレ イ)はγ線、β線に関する限り Svと同じ単位です。

98.16.2. もうちょっと遅いデータ

同じ時刻でも新宿と東大駒場では振る舞いが違ったりしていて、原発から200 キロ離れていてもほんの数キロの距離でだいぶ違うことがわかります。

98.16.3. その他

33時間風予報は、33時間後(1日4回更新のようなで26時間後くらいまでしかな い時もありますがう)までの風向き、風速の予報データが見られます。放射性 物質がこの通りにくる、というわけでは決してありませんが、原発の上を強い 西風がふいていればしばらくは大丈夫だし、自分のいるほうにふいていれば要 注意です。

また、雨の予報もあります。こっちも細かいところはあまり信用できない気が しますが、大体の目安になります。原発から風がふいている時の雨のふりはじ めには気をつけたいものです。

この辺は、ちゃんと国が予報とか出すべきと思いますが、、、 「ただちに健康に危険があるレベルではない」って、それ、ただちではないけ ど危険があるかもしれないの?というような疑問もでてくるわけですから。

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