Previous | ToC | Next |
相変わらず原発の話です。
その4 100 から2週間たって、事
態の収束にむけて何か進展があって欲しいところですが、残念ながら具体的な
動きはなにもありません。
動きらしいものは、東電が 4/17 に出したプレスリリース
福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋
くらいではないかと思います。これも、6-9ヶ月で収束とありそうにない
ことが書いてあるのは問題ですが、別紙1というものを見ると、
と書いてあり、要するに、現在放射線量を減少傾向にできていないし、
放射性物質の放出の管理もできていない、と正直に書いてあるわけです。
また、「ロードマップ」というほうを見ると
4/19 に
内部被曝の影響については、専門家の間で主張に4桁程の幅があり、
何が正しいのかの判断は困難です。
危険を大きいめに見積もる専門家(委員会)としては、
ECRR というものがあります。ECRR のレポートだと、
内部被曝の影響は外部被曝の数百倍あるかもしれないので、安全基準値は
今までの 1/1000 くらいにせよ、ということになります。
もちろん、このレポートにはそんな馬鹿なことがあるか、的な批判も多く、本
当に数百倍もリスクが大きい、というわけではないかもしれません。が、
ICRP の評価モデルからの予測に比べてチェルノブイリ周辺でのがんの発生率は
桁で多い、という疫学調査結果はあるわけで、 ICRP モデルを無批判に信じる
のもあまり科学的な態度とは言えないのではないでしょうか。
大雑把にいって、内部被曝の影響が外部被曝の 1000倍、ということですから、
福島からの放射性物質による空間放射線強度が 0.1uSv/h あると、それは
100uSv/h と同じ効果になって年間では 1Svとなり、1年いるとその後の一生の
うちに被曝が原因のがんで死ぬ確率が 5-10% くらい、ということになります。
例えば新宿では、今日現在の測定値が 0.07uSv/h で、3/11 以前は 0.03uSv/h
程度だったので福島起源の分が 0.04uSv/hあり、これの内部被曝による影響は
400mSv/年、3/21 からの1ヶ月の分だけで(平均すると倍くらいの強度があったので)
100mSv 相当で、1% 前後がんで死ぬ、ということになってしまいます。
これは、いくらなんでも過大な見積もりではないかと私も思うわけですが、
本当の影響がどれくらいであるかは数年後にならないとわかりません。
極めて個人的な判断としては、 ICRP モデルを1000倍するのはやりすぎでも、
10-30倍程度は多いと思っておいたほうがあとで後悔する可能性が
低いのではないかと思います。つまり、新宿では 0.04uSv/h ではなく 1.2uSv/h で、
年間 12mSv にあたる、千葉県柏市では 0.4uSv/s ではなく 12uSv/h で、
年間 120mSv にあたる、と思っておきましょう、ということです。
新聞等で、「現在1日 154兆ベクレルの放出」という報道がありました。
例えばhttp://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110423-OYT1T00667.htm
では、
3/17 以降の放出のほとんどは 3/20-21 (18-20 はデータがないです
が、おそらくは東京等で大量の降下があった 20-21 日に放出があったでしょう)
と 3/30 となっており、放出量見積りがまだない 4/8,9,19 等に結構な量の降下物があるので、
上のCs-137 が 0.14TBq/h = 3.4TBq/日というのは特になにもなかった、
放出が特に少ない日の数字、と考えるべきでしょう。つまり、平均すると
1日 300TBq 以上, ヨウ素換算では 1万テラベクレル/日以上の放出が続い
ている、ということが安全委員会の資料に書いてあることです。
時事通信の14日の報道(既にオンライン記事はないのですが)によると
私の個人的な意見としては、安全委員会の見積もりにはいっている放出量推定
は陸に落ちた降下物の量から逆算しているようなので、西風で海にいった分は
はいっていないのではないかと思います。そうすると、実際に放出された量は
安全委員会見積もりの多分 5-10倍で、原発にあった総量の5-10分の1くらいが
既に放出されたのではないかと思います。
そこまででてしまっている、というのは実はよい知らせでもあって、これから
何かあっても今までにでた程の量は簡単にはでません。
もちろん、これから
数ヶ月にわたって放出が続くと、累計量では今までにでたくらいになるわけで
す。また、これから夏にむけて風向きが変わり、福島では北東からの風が卓越
します。西風が卓越した3月までとは様子が変わるので、陸に落ちる割合は
増える可能性があります。
つまり、東北・関東に関しては、今までに降下した以上の量が
これから数ヶ月でくる可能性は決して低くはない、と考えるべきではないかと
思います。
なお、これは、なんらかの爆発とか、大変なことが起きなかった場合の話です。
なので、水に良く溶けているヨウ素とセシウムが放出物の主体と想定しています。
1ヶ月ちょっとたった現在の時点では、まだ Ru-103, Rh-103, Zr-95, Nb-95,
Y-91 といった様々な元素がベクレル数では Cs-137 の10倍程度あり、
Cs-137 の放射性物質総量に占める割合は 1% 程度です。また、骨に蓄積する
とされる Sr-90 も、現在のところ大気中に放出された分は少ないとされてい
ます。これからの事態の進展によっては、こういったものが放出される可能性
もあるわけです。
現在までのところ、ストロンチウムの測定データはあまりないのですが、
http://www.asahi.com/national/update/0412/TKY201104120522.html
では
また、雨の予報もあります。こっちも細かいところはあまり信用できない気が
しますが、大体の目安になります。原発から風がふいている時の雨のふりはじ
めには気をつけたいものです。
この辺は、ちゃんと国が予報とか出すべきと思いますが、、、
「ただちに健康に危険があるレベルではない」って、それ、ただちではないけ
ど危険があるかもしれないの?というような疑問もでてくるわけですから。
101. 福島原発の事故その5 (2011/4/24)
101.1. 東電の現状認識
2. 目標
基本的考え方を踏まえ、目標として以下の2 つのステップを設定する。
ステップ1: 放射線量が着実に減少傾向となっている
ステップ2: 放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている
(注)ステップ2 以降は「中期的課題」として整理
といった目標があげられていることから、
というのが現状認識であることがわかります。かなり、現実的な現状認識になっ
てきており、また事態の収束も短期では無理、ということも公式に認め
たわけで、具体的な動きにつながっているかどうかはともかく、最初の1ヶ月
のような完全にピントはずれな対応、というわけではなくなってきているかも
しれません。
101.2. 放射性物質の量は?
101.2.1. 福島は安全なの?
文部科学省は、福島県内の学校の利用の基準について、大気中の放射線量
が1時間あたり3.8マイクロシーベルト以上となった学校などについて、校
庭や屋外での活動を制限することを決めた。
文部科学省は、福島県内の小中学校などに通う子どもたちについて、放射線
量を年間20ミリシーベルト以下とするために、学校などの校舎・校庭の利用
判断の暫定的な目安を、1時間あたり3.8マイクロシーベルト未満とすること
を決めた。
という報道がありました。これは、 3.8uSv/h 以下のところではなにも対策し
ないということに決めた、ということでもあります。これは、子供でも
1年に20ミリシーベルトも被曝させてもよい、という判断であり、さらに
外部被曝に対して内部被曝はせいぜい同じ程度にしか効かない、という
かなり楽観的な評価モデルに基づいたものです。このモデルは基本的には ICRP
によるものです。
101.3. もし ECRR レポートが本当なら?
101.4. 放出量は?
内閣府原子力安全委員会は23日、東京電力福島第一原子力発電所から大
気中に放出された放射性物質の量が、放出量が落ち着いた今月5日の時点
でも、1日あたり154テラ・ベクレル(1テラは1兆)に達していたこ
とを明らかにした。
5日に福島第一原発から大気に放出された放射性物質の推定値は、ヨウ素
131が毎時0・69テラ・ベクレル、セシウム137が同0・14テラ・
ベクレル。国際的な事故評価尺度(INES)で使われるヨウ素換算値で、
ヨウ素とセシウムの合計量を計算し直すと、放出量は同6・4テラ・ベク
レル(24時間で154テラ・ベクレル)となることがわかった。同委員
会はこれまで、5日ごろの放出量について、セシウムとヨウ素の量を単純
に合計し、「毎時約1テラ・ベクレル以下」と低く見積もっていた。
とあります。これはなんだかよく意味がわからないですが、要するに
でている、と発表した、ということです。 154TBq/日になるのは、
セシウムの量をヨウ素と比べるため、半減期が長いことを考慮して40倍して足
す、というのが INES のレベル計算の方法になっていて、それを考慮した
ものです。さて、これが多いか少ないか、ということですが、同じ安全委員会
の 4/12 付けの
放出量見積り では、Cs-137 の4/6 までの累
計放出量が 1.2E16Bqで、テラベクレルでいうと 1万2千テラベクレル、その大
半が 3/17 以降に放出されています。つまり、 3/17 以降今日までを平均する
と、大体 300 TBq/日になって上の新聞報道の 100倍です。
福島第1原発事故で、経済産業省原子力安全・保安院は14日、東日本大震
災で原子炉が停止した際に1〜3号機にあった放射能量について、放射性ヨ
ウ素で計610万テラベクレル(テラは1兆)だったなどとする推計を発表
した。
12日に保安院が発表した総放出量と比較すると、放射性ヨウ素で約50分
の1、放射性セシウムで約120分の1が外部に放出されたとみられる。
となっています。この見積もりは安全委員会の見積りの半分の量なので、安全
委員会見積もりでは放射性セシウムで 1/60 が外部の放出されたことになりま
す。
発表によると、土壌のサンプルは3月16、17日に浪江町で2点、飯舘
村で1点が採取され、分析された。この結果、ストロンチウム90は最大
で土壌1キロあたり32ベクレルだった。半減期が約50日のストロンチ
ウム89は最大で260ベクレル。同時に分析されたセシウム137は1
キロ当たり5万1千ベクレルで、ストロンチウム90の値は、この0.0
6%の量だった。
となっています。チェルノブイリではセシウムの 1/10 程度のストロンチウム
が放出されたということなので、現在のところ、この福島県のデータでは、
ストロンチウムは少ないわけです。もしも、他の日に他のところで降下した
量も同様に少ないなら、現在のところストロンチウムによる汚染の危険は
それほど大きくはないと思われます。
101.5. 参考になるサイト(再々々掲)
101.5.1. リアルタイムモニタデータ
単位、表示方法がバラバラですが、例えば茨城県で急に数字があがると、風が
千葉とか東京にまでくる可能性が高いので、注意したいところです。 Gy(グレ
イ)はγ線、β線に関する限り Svと同じ単位です。
101.5.2. もうちょっと遅いデータ
同じ時刻でも新宿と東大駒場では振る舞いが違ったりしていて、原発から200
キロ離れていてもほんの数キロの距離でだいぶ違うことがわかります。
101.5.3. その他
33時間風予報は、33時間後(1日4回更新のようなで26時間後くらいまでしかな
い時もありますがう)までの風向き、風速の予報データが見られます。放射性
物質がこの通りにくる、というわけでは決してありませんが、原発の上を強い
西風がふいていればしばらくは大丈夫だし、自分のいるほうにふいていれば要
注意です。
Previous | ToC | Next |