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5 実現可能性

さて、問題は、系外銀河のアストロメトリがそうはいっても技術的に可能かど うかということである。これは筆者にはよくわからない。マイクロ秒の精度自 体は可能であるとして、問題は銀河の大きさはマイクロ秒よりはるかに大きい、 秒から分単位のものであることである。つまり、それだけの大きさを持つもの の位置を決める必要があり、基本的に PSF が見える星像とは話が違う。

さらに、銀河の内部運動による変形も、銀河自体の運動に比べて決して小さい ものではない。また、変光星や新星によっても銀河の表面輝度分布は影響を受 けるであろう。もちろん、 AGN のような中心の狭い領域が極めて明るいもの であればこのような問題は相当程度まで避けることができるが、 宇宙論をするという立場からはやはり普通の銀河をみたいわけであり、これは 今後の検討が必要である。観測波長についても赤外のほうがいいとかそういう こともあるかもしれない。

逆にいえば、近傍の銀河についてはその内部運動を直接見ることができるのか もしれない。

なお、上の議論から、精度がマイクロ秒でなく、 GAIA や JASMINE 程度の 10マイクロ秒であっても、数十 Mpc まで、つまり乙女座銀河 団の向こう側くらいまでは十分いける。つまり、 CfA サーベイ程度の宇宙を カバーできることになる。

年周視差はあまり考えないで、固有運動だけをターゲットにするので、 HIPPARCOS でやったような大角度測定は必要ではない。言い換えると、単にな るべく大きい鏡と可能な限り大フォーマットで PSF を十分オーバーサンプル する CCD がついた、汎用的なイメージング望遠鏡でよい。

実際、 Anderson and King(astro-ph/0007028,0006325) は HST WFPC2 で固有 運動については HIPPARCOS 以上の精度を出すことに成功している。必ずしも アストロメトリのための特別にコストのかかる装備が必要というわけではない。

つまり、装置としてはあんまり芸のないもので、波長も可視から近赤外の辺り でミラーは冷却しなくてよい、極めて安直なもので済むのではないかと思われ る。技術的にはつまらないかもしれないが、、、



Jun Makino
平成14年10月4日