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6 計算速度の例

ここでは、比較的最近の Blackston and Suel[5] の結 果を紹介しよう。彼らは多重極展開を使った FMM, アンダーソンの方法を使っ たFMM、および普通のツリー法を、様々な並列計算機上に実装し、その精度、 性能を比較した。結果のすべてを紹介は出来ないので、比較的精度が低い(ポ テンシャルの相対精度が 程度)の場合に粒子数と1ステップの計算 時間の関係を表1に示す。粒子分布はプラマーモデルと呼ばれる球対称なもので、 計算機は 16 プロセッサの Cray T3Eである。ここではアンダーソンの方法の 時間が示されていないが、別のデータではFMM に比べて2-3倍高速となってい る。すなわち、FMMはツリー法に比べて有意に遅いが、アンダーソン法ではほ ぼ同等な計算速度を実現できる。

 
表 1: 実行速度の例。数値は計算時間(秒)

FMMはAnderson 法の場合でもツリー法に比べてはるかに複雑である。それ だけの努力を必要とするにもかかわらず、現在のところ計算精度が同程度の場 合に FMM のほうが速いという報告はないということは心に留めておくべきで あろう。

なお、上の議論は3次元の場合である。FMMの計算量は2次元と3次元で大きく違 うということに注意しておく。2次元では調和関数展開の項数は であ り、また相互作用するセルの数が通常の FMM の場合で27と小さい。これに対 して 3 次元では項数が となり、また相互作用するセル数が189と大 きくなるためである。



Jun Makino
Tue Sep 1 21:46:06 JST 1998