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6 運動の積分

平衡状態というものを考える上で基本になるのは、「運動の積分」という概念 である。ポテンシャル $\Phi$のもとで、ある ${\bf x}, {\bf v}$ の関数 $I$ が運動 の積分であるとは、その上で

\begin{displaymath}
{d \over dt} I({\bf x}, {\bf v}) = 0,
\end{displaymath} (11)

がなり立つことである。つまり、実際にすべての粒子の軌道について、その上 でその量が変化しないということである。ちょっと変形すれば
\begin{displaymath}
{\bf v}\cdot \nabla I - \nabla \Phi \cdot {\partial I \over \partial {\bf v}}
= 0
\end{displaymath} (12)

これと、上の無衝突ボルツマン方程式を比べてみると、すぐわかるように時間 微分が落ちているだけである。

なお、「運動の積分」というときの流儀は2通りあって、一般に運動の保存量 のことを「運動の積分」という流儀もあるが、ここでは位相空間の座標だけの関数 であって同時に保存量であるものをさす。具体的には、たとえば1次元調和振 動子で「初期の位相」というのは保存量だが運動の積分ではない。これは、時 間が入ってくるからである。

6.1 例

エネルギー $v^2/2 + \Phi$ や、ポテンシャルが球対称($r$だけの関数)の 場合の角運動量ベクトル ${\bf L} = {\bf r}\times {\bf v}$ は運動の積分である。



Jun Makino 平成20年6月11日