RK 法は、「一段階」法である。これはどういう意味かというと、微分方程式
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これに対して、一段階ではない方法、つまり多段階法というのは、 を計算するのに、 以外の情報、例えば や、そこで計算した 導関数の値 、さらにもっと昔の情報を使うやりかたのことである。 これは、プログラムとしてはもちろんRK法に比べれば面倒になる。昔の値をとっ ておかないといけないし、また、一番最初に計算を始める時にどうするかとい う問題もあるからである。
さらに、「一段階でない」というだけなので、可能な計算法にあまりに多様な 可能性がある。一例として、以下のような方法が考えられる。
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この方法は、しかし、立派な名前までついているのにもかかわらず、実は使え ない公式である。
どのような問題があるのかを示すために、以下の線形方程式
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ちょっと式を見ればわかるように、絶対値が 1 より大きい固有値は 、つまり なら負である。したがって、必ず振動的に発散す ることになる。
なお、上のような、安定な線形微分方程式について振舞いを調べるというのが、 常微分方程式の安定性解析の基本になる。非線形な方程式では違うとかいろん なことがあるかもしれないわけだが、まあ、少なくとも線形安定でないと話に ならないし、それ以上のことは一般論としていうのは難しいからである。
さて、安定でちゃんと使える線形多段階法はじゃあどんなものか というわけだが、これも無限にいろんな作り方がある。そのへんの詳しい話は そういう本に譲ることにして、ここではもっとも広く使われているアダムス法 について説明する。
原理は、いくつかのステップでの導関数(微分方程 式の右辺) の値を憶えておいて、それを通る補間多項式を作り、それを積 分して解を求めようというものである。
図に概念を示す。ここでは、ラグランジュ補間
(ニュートン補間)をして多項式を作る。で、その作った多項式を積分する。
例えば、点 から まで積分するのに、点 から までの関数
値を使うとすれば、次の多項式で
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簡単な例として、の場合を考えてみよう。この時、補間多項式は一次
であって
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一般に、アダムス法では任意段数の公式が構成でき、その次数は段数に等しい ことがわかっている。これは、ルンゲ・クッタなどに比べればはるかによい性 質をもっているということでもある。
アダムス法はいくらでも高次の公式が作れ、計算量もあまり多くないというこ とがわかっているが、必ずしも広く使われているというわけでもない。その理 由はいろいろあるが、一つは、
「どうやって計算を始めるべきかよくわからない」
ということである。つまり、初期値問題としてはもちろん における しか知らないのに、多段階法ではその前の時刻での解が必要になるわけ である。これに対する対応策はいくつかあるが、時間刻み一定の場合には、基 本的にはルンゲ・クッタなどの別な方法で解を求めておくというやりかたが普 通である。
というわけで結局プログラムを書く手間が2倍以上になるというのが、多段階 法の実用上の問題である。
さて、前に述べた公式では、補間多項式を陽的に求めた。すなわち、時刻
とそれより以前の値だけを使っていた。これに対し、陰的な補間多項式、つま
り での関数の値を使った公式というものも考えられる。
刻み が定数であるとすれば、を決めれば前と同様に
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陰的公式の場合、例によってどうやって代数方程式を解くかが問題になる。通 常の方法は、
なお、このやり方を、予測子・修正子法と呼ぶ。線形多段階法はほとんどこの 形で使われるため、線形多段階法のことをさして予測子・修正子法と呼ぶ人も いる。