前回は、Violent relaxation の結果として自己重力系の外側(virial radius のずっと外側)については、
というような話をした。
さて、それでは、中心部の構造についてはなにもいえないのであろうか?これ は実はまだ良くわかっていない問題である。10年前に、 Navarro たち (ApJ 1997, 490, 493) は、数値計算の結果をもとに以下のような主張をした
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これは、極めて有名になった NFW プロファイルである。
彼らはなぜそのようなことが起きるかについての解釈とか説明は特に与 えていないが、例えば Syer and White (MN 1998, 293, 337)といった人 達が説明を考えてはいる。
しかし、実は、Navarro たちの結果の解釈は割合すぐに異論がでて おり、 CDM と初期条件を制限しても、例えば Fukushige and Makino (ApJ 1997, 477 L9) とか Moore et al. (ApJ 1998, 499, 5L) を見ると、 上の「ユニバーサル」な形になったのは数値誤差のせいという主張が なされている。これらの結果では Navarro たちのも のより中心で等温に近くなっている。 Navarro らの結果は 1 万粒子程度であ るが、 Fukushige ら、 Moore らは 100 万粒子程度であり、数値誤差の影響 が小さくなっていることは間違いない。「真の」のスロープがどうなるかにつ いては現在も活発な研究が続いているが、現時点では、CDM からの数値 実験でできるハローの中心部は NFW よりもスロープの傾きが大きいというこ とはほぼ万人の認めるところになったようである。
全く余談であるが、福重君はこの仕事とその続きで天文学会研究奨励賞をもらっ た。
さらにもっと余談であるが、福重君がこの計算をした動機は、1996年に GRAPE-4 を使って何か大きな計算で高い実効性能を出したい(Gordon Bell Prize に応募したい)、そのためにはとにかく粒子数が沢山必要で、普通の treecode とかではできないようなシミュレーションでよいネタがないか?と か色々考えたことである。
つまり、現状では、中心部(というか、 half mass radius より内側)の構造は、
という状況であるといえる。現在では、福重君の仕事からさらに 3 桁程度粒 子数を増やした、 粒子程度の計算も行われているが、中心部の構造が どうなるか、それは何故か、というのは依然明確にはなっていない。