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1 はじめに

この小論では、大質量ブラックホールの形成過程についての我々の現在の理解 をまとめたい。ここで大質量というのは、多くの銀河中心にあると考えられて いる100万 ${\rm M_{\odot }}$ ( $1{\rm M_{\odot}}= 太陽質量 \simeq 2\times 10^{30}{\rm kg}$) を超えるようなブラックホールをさす。そのような大質量 ブラックホールについては、様々な形成シナリオが提案されてきている。しか し、現在までに提案されてきたシナリオは全てなんらかの困難を抱えて いた。 ここで我々が解説するシナリオは、少なくとも現在のところ致命的な 困難は見つかっておらず、また最近の新しい観測事実との整合性も良いという 意味で極めて有力なものであると我々は考えている。

とはいえ、あくまでもいろいろあるシナリオの一つでしかなく、実証された理 論というにはまだ遠いものであることはあらかじめ断わっておきたい。

以下、まず 銀河中心のブラックホールについての現在の時点での観測的知見 について概説し、次にいくつかの従来の形成シナリオとそれらの問題点につい てまとめる。次に我々のシナリオにいたるきっかけとなった M82 における中 間質量ブラックホールについて、その発見の経緯と意義を簡単にまとめ、それ から我々の新しいシナリオについて述べる。M82 における発見自体について は、既に本誌にも詳しい紹介[7]があるので、ここでは 主に理論的な立場からまとめる。ここではもちろん中間質量ブラックホールが 通常の太陽質量の10倍前後の ブラックホールと大質量ブラックホールをつな げるリンクの役割を果たす。

最後に、我々のシナリオが示唆する研究の方向がどのようなものになるかを、 理論、観測の両面についてまとめたい。



Jun Makino
平成14年6月13日