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3 10倍はどこに消えたか

1 に、代表的なマイクロプロセッサのトランジスタ数と、実効的な演算器の数、 つまり1クロックあたり浮動小数点演算を何回できるかという数を示す。トラ ンジスタの数の増え方はムーアの法則にほぼ一致しており、25年にわたって指 数関数的な増加を示している。しかし、実効的な演算数のほうは、1990年前後 に1クロックあたり2演算を実現してから進歩が止まっている。

図 1: マイクロプロセッサのトランジスタ数(単位:100万トランジスタ、丸 と破線) と、クロックあたりの演算数(十字と実線)の進歩。
\begin{figure}\begin{center}
\par\leavevmode
\epsfxsize 5 cm
\epsffile{micron_n_2002.ps}\end{center}\end{figure}

問題が何であったかは明らか である。演算器の数が、2から増えなかったのである。1980 年代にはマイクロプロセッサの演算能力は順調に増えていたが、この時代にもっ とも速い計算機であったのはベクトル計算機であり、そこではやはり 演算器 の増加はきわめて緩やかであった。

つまり、1台の計算機、あるいは1つのマイクロプロセッサに実装される演算器 の数が2個程度を超えては大きくならないのが、デバイスの進歩がそのま まは計算機の速度の進歩につながらない理由ということになる。



Jun Makino
平成14年6月13日