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2 恒星系でのジーンズ不安定とランダウ減衰

恒星系の場合を考えることにしよう。

2.1 CBEの線形化

何度も出てきたがもう一回式を書いておく。


\begin{displaymath}
{\partial f \over \partial t} + {\bf v}\cdot \nabla f - \nabla \Phi \cdot
{\partial f \over \partial {\bf v}} = 0,
\end{displaymath} (15)

ここで $f$は6次元位相空間での分布関数である。$\Phi$ は重力ポテンシャ ルであり、以下のポアソン方程式の解として与えられる。
\begin{displaymath}
\nabla ^2 \Phi = - 4\pi G \rho.
\end{displaymath} (16)

$G$ は重力定数であり、 $\rho$ は空間での質量密度
\begin{displaymath}
\rho = m\int d{\bf v}f,
\end{displaymath} (17)

である。 これを流体の時と同様に線形化して、その振舞いを調べる。分布関数を $f_0
+ f_1$、ポテンシャルを $\Phi_0 + \Phi_1$とし、添字0がつくほうは定常解で あるとして式を整理すれば
\begin{displaymath}
{\partial f_1 \over \partial t} + {\bf v}\cdot \nabla f_1
- ...
...\nabla \Phi_1 \cdot {\partial f_0 \over \partial {\bf v}}
= 0,
\end{displaymath} (18)


\begin{displaymath}
\nabla ^2 \Phi_1 = - 4\pi G \int f_1 d{\bf v}.
\end{displaymath} (19)

ということになる。これが線形化された無衝突ボルツマン方程式である。

2.2 ジーンズ不安定

上の線形化されたボルツマン方程式は、平衡解の回りならば何でも使えるが、 ここではもっとも簡単に解析できる場合として空間分布が一様な場合を考える。 これから $f_0$は速度だけの関数であり、 $\Phi_0$ は定数としていいことに なるので

\begin{displaymath}
{\partial f_1 \over \partial t} + {\bf v}\cdot \nabla f_1
- \nabla \Phi_1 \cdot {\partial f_0 \over \partial {\bf v}}
= 0,
\end{displaymath} (20)

と少し式が簡単になる。まず、流体の場合と同じような平面波型の解を考えて みよう。


$\displaystyle f_1$ $\textstyle =$ $\displaystyle f_a({\bf v}) \exp[i({\bf k}\cdot {\bf x}- \omega t)]$ (21)
$\displaystyle \Phi_1$ $\textstyle =$ $\displaystyle \Phi_a \exp[i({\bf k}\cdot {\bf x}- \omega t)]$ (22)

速度空間の方にも伝わっていく波とかいうのも考えられないわけではないが、 とりあえずそういうのは考えない。これらを上の線形化した式に入れれば
\begin{displaymath}
(-\omega + {\bf v}\cdot {\bf k}) f_a({\bf v}) - \Phi_a {\bf k}\cdot {\partial f_0
\over \partial {\bf v}} = 0
\end{displaymath} (23)


\begin{displaymath}
-k^2\Phi_a = 4\pi G\int f_ad {\bf v}
\end{displaymath} (24)

となる。これらから $f_a$ を消せば、 $\Phi_a$ も落ちて
\begin{displaymath}
1 + {4 \pi G \over k^2}\int {{\bf k}\cdot {\partial f_0 \ove...
...artial
{\bf v}} \over {\bf k}\cdot {\bf v}- \omega}d{\bf v}= 0
\end{displaymath} (25)

となって、$f_0$が与えられていれば $k$$\omega$ の関係、すなわち分散 関係を与える。

もっとも、これはちょっと困った式で、 ${\bf k}\cdot {\bf v}- \omega = 0 $が特 異点になっている。したがって、実数の振動数を考えるのはすこし厄介な話に なる。まず、臨界点、すなわち振動数が $0$の場合と、不安定、すなわち振動 数が純虚数の場合を考えよう。


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Jun Makino 平成21年5月25日